子供用の授業を大人にやるってどうなのよ?問題



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先延ばしにしてきた宿題を書きます。

先日、私に無断で「日本が好きになる!歴史授業」を大人向けの講座でやろうとした方がいて、しかも私の名前はどこにも出ない宣伝をしていたのを咎めたことがありました。

Facebook上でもいろいろ議論が広がって、彼を支持する人(アパの勝兵塾の方?)や大目に見ろよ(著名なゆーちゅーばー)もいたようですが、大勢はダメだろうということになり、彼も「やめます」と約束してくれました。ぼくの授業をよくわかっている方ならまたほかの選択肢もあったのですが、彼は授業の趣旨や意味合いを曲解しているところがあり、ここに至るまでの懲りない無礼の繰り返しもあったので、とくに厳しい対応を取りました。

その議論の流れで三浦小太郎さんがぼくの考えを訓だ投稿をしてく入れました。それをまず紹介します。

 

これは斎藤さんとは違う立場の意見かもしれないけど、子供たちに教える授業と、成人した人たちに行う「講演」や「セミナー」「学習会」は、全く違う次元のものです。

 前者は、まだ自分で判断する時期ではなく、これから国民国家の一員となるために必要な「メインカルチャー:正統な知識」を身に着けるためのものです。まずこれによって子供たちは「日本人としての健康な自尊心」を持てる。

 ただ、それだけがすべてではありません。大人になって社会に出れば、そこで様々な矛盾にぶつかります。日本社会の美点とともに、その欠点にも当然出会い、悩むこともあります。それを耐え抜き乗り越えるためにもまず自尊心が必要です。

 しかし、その後に学ぶ歴史は、子供の時と同じものではなく、自尊心を持ちつつより客観性と普遍性を目指すものです。この違いくらい、学校の先生やった人ならわかりそうなもんで、子供の授業をいかに私たちが戦後史観の偏見があるとはいえそのまま大人にやるもんじゃありません (三浦小太郎さんの投稿から引用)

これは基本的ぼくの考えと同じです。ただいくつかすれ違うところもあるので、それを簡単に書いてみます。

「小中学生用の授業」ということからかなり幼稚な歴史理解が想定されているようですが、「日本が好きになる!歴史授業」のシステム(国民の物語・時代区分とカリキュラム・2回の国づくりによる教材構成。国家のリーダーの政策を考え討論する学習方法・授業の再現可能性を高める)は、たぶん大学生あたりまでは射程内に含んでいます。

さらにわが国における大人の歴史理解の現状は日本人の「メインカルチャー:正統な知識」としてはとても心もとない現状があります。これはメディアと教育による情報コントロールの結果だと思うのですが、その結果として、冒頭に記したような歴史セミナー・YouTubeの歴史番組など、いわゆる保守的な情報業界が成立しているわけです。

ぼくが現役で授業を実践したころのような孤立無援の時代が終わって、自虐史観批判の動きが一定程度日の目を見るようになり、これまでとは異なる歴史(物語)への需要も高まっているという現状があります。またそれゆえに国民がアイデンティティーとして共有できる歴史(物語)が、共有できない深い断絶の様相を見せています。

そういう流れの中で、私の小学校歴史授業・中学校歴史授業を参加費を取って大人に教えてみようと彼は思いついたわけです。もちろん主観的には日本をよくしたいという思いだったのでしょうが、何の迷いもなく子供のためにつくった授業を大人にやって(それで生活して)いこうというのは間違っています。また彼は「日本が好きになる!歴史授業」の主旨や内容、方法についても理解できていないところがありました。

昨日の第8回歴史授業講座(これは教師に授業を広める意図でやっています)の冒頭で、上記の三浦さんへのかんたんな返信のつもりで少しお話しました。

まだ簡単なメモの形ですが以下のような内容でした。

①この授業で学ぶことはもともと大人に行うことは想定していなかった。
 日本が好きになる!歴史授業講座は教師(大人)に伝えるために始めた。

②やがて自虐史観(東京裁判史観・反天皇制史観)で洗脳された大人には、日本とは何か?を知るきっかけになることがわかった。YouTubeなどの他の大人向け歴史コンテンツにはない学びがこの授業にはあると。

ただし「明治」と「昭和の戦争」の授業は特に注意が必要です。

・自虐的な歴史教育を「書きなおす」という趣旨でつくられている。

子供達が歴史を共感的理解できることを優先している(共有できる国民の物語)

複雑な史実を子供の理解を優先して単純化している

・この時代(とくに昭和)の理解は今の日本の危機的な課題と直結しているので、大人がこの授業で止まってしまうの  
 は害が大きい。

・自我形成期の子供のための歴史であり、これが主権者国民の「真実の歴史」ではない。

・「歴史に学ぶ」ためには、さらに多様な視点(日本にとって不都合な面も)含めて学ぶことが必要です。

以上です。

まだ不十分なものですが、改めて考える機会をつくってくださった三浦小太郎さんに御礼を申します。
今後も、日本の小中学校の歴史教育を改善するためにできることをやってまいりますので、どうぞよろしくお願いします。

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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