ロシア・ウクライナ戦争を考える(3)トランプのナショナリズム?



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プーチンの「ナショナリズム」を考えたので、次にトランプの「ナショナリズム」を簡単に見ておきたい。よくわからないところもあるがとりあえず整理してみた。以下の項はすべて「MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)」という国家目標のために設定されている。もう少しうまい整理の仕方がありそうですが今日のところはこれまで。

1. 「アメリカ・ファースト」

  • 他国および国際社会の利益ではなく、アメリカ国民の安全・繁栄・雇用を最優先する。
  • 大統領就任演説(2017年1月20日) “From this moment on, it’s going to be America First.”
  • 国家安全保障戦略(2017年版):章タイトルに「アメリカ・ファースト」の明記あり。

2. 反グローバリズム(国家主権優先)

  • 自由貿易協定・国際機関(国連・WHOなど)への懐疑。国家主権の優先。不要な国際貢献・国際援助などの否定。
  • NAFTA再交渉(USMCAへの変更)、TPP脱退(2017年1月23日大統領令)国連やWHOへの不信発言(2020年パンデミック時その他)

3. 移民規制・国境の壁建設

  • 不法移民への厳格対処、国境の物理的封鎖、移民制限。
  • 大統領令13767号(2017年1月25日):メキシコ国境の壁建設開始、「ムスリム渡航禁止令」(大統領令13769号)

4. 経済ナショナリズム(保護主義)

  • アメリカ国内産業・雇用保護のための関税導入、製造業回帰の推進。
  • 対中国関税(2018年以降)、スチール・アルミ関税(2018年)、相互関税政策、「Buy American, Hire American」政策(大統領令13788号)

5. 多国間協定より二国間交渉重視

  • 多国間協定の否定。国益を最大化するために一対一で有利な取引を追求。
  • TPP離脱、パリ協定脱退、イラン核合意(JCPOA)破棄(2018年5月)など

6. 反エリート・反メディア(いわゆるポピュリズム的)

  • ワシントンの「腐敗した支配層」・「ディープステート?」・「フェイクニュース」メディアへの対決姿勢。
  • 自著『火と怒り』『トランプのアメリカ第一主義』 選挙演説・SNSでの一貫したメディア攻撃

7. 行き過ぎたリベラル政策の否定・「伝統的アメリカ価値」の強調

  • キリスト教的家族観、軍・警察・国旗の尊重、LGBTQ政策への制限的姿勢(人間の性は「男」と「女」のみ)。「常識」に帰ろう。
  • 連邦補助金からのトランスジェンダー支援除外(2017年以降)・教育現場での愛国主義教育「1776委員会」設立(2020年)・教育省の廃止方針。

トランプのナショナリズムをまとめると

  • 国家主権の絶対視と国民の利益最優先(国際秩序を守る超大国ではなく、我儘が言える主権国家になりたい)
  • 外国人・移民に対する排他性が言われるが、実際は普通の主権国家に戻りたいという政策に見える。
  • 自国の伝統文化・伝統価値の復活を強調し、リベラルなアメリカ文化の世界支配を否定する。
  • ・・・ナショナリズムには違いないが、アメリカがこれを言うと第二次世界大戦後の国際秩序に対する責任から降りたいだけに見えてしまう。自国の安全保障と経済の利益だけに集中したいという願望が強調されている。「MAGA」というスローガンだけ見るとプーチンの大ロシア主義と似ているが、指向性は逆のように見える。

アメリカが「ナショナリズム」に立つことの特殊性

  • トランプには経済的利益中心の取引的な思考が中心にある。プーチンのような偉大なロシア帝国の復興という民族主義的な願望とはかなり異なる。いま「ナショナリズム」という概念で両者をくくるのは難しい。ただし、グローバリズムを「国家主権の制限」「国家主権の否定」という面でだけとらえれば両者は同じだが。
  • トランプ2.0では、アメリカがウイルソン以来やってきた「自由主義・個人主義・民主主義」で世界を制覇するという立場(世界のリーダー&警察官)を完全に放棄した。
  • アメリカの「例外主義」を語るが、他国を侵略・同化するような外征的姿勢は基本的に取らない。何かあれば戦争だというアメリカはそこにはない。強いて言えば「平和主義」に見える。
  • ただし、対中国の安全保障戦略が前面に出た場合は、パナマやグリーンランドを米国領にするぞ!といった帝国主義的な勢力圏思想になってしまう。

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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