昭和の戦争の授業は、次のことをめざしてつくってある。
目標「昭和の戦争を学んだあと、東京裁判の弁護人になって、検察側意見に反論できるようになる」
これは近代的な裁判観にもとづいているので、生徒が巣鴨の被告たちがやってきたことについて全面的に賛同するとか心酔するとかは全く必要ない。むしろそのような立場からの感情的な弁論はかえって効果が低いと思われる。
検察側のストーリーと証拠を理解したうえで、証拠に基づいた冷静で論理的な弁論が弁護人には期待されている。
もちろん自国の先人たち、過酷な時代のリーダーたちへの一定の共感や敬意は必要ではあるが。それよりも、が検察側に有効なダメージを与えられる弁論を書くことが弁護人の倫理となる。
なぜこうなったかというと、小学校も中学校も東京裁判の検察側弁論と判決を正しいものとして書かれていたからです。30年でだいぶましになったが基本は変わっていない。あえていえば、戦後日本の現代史学がそうで、いまもそれを批判する考えには「歴史修正主義」という悪罵が投げつけられてしまう。
勝者=連合国は文明的であり正義だ。敗者=日本は野蛮で悪だ。というのが、いまも「修正してはならない真実の歴史」だとされているから、そうなるのですね。おかしいと思います。
というわけで、弁護人になれるような史実(それは教科書にはない!)も学べる授業をやってきたわけです。
姫路ではそれをほぼそのままやりました。岡本スライド「リ・ビルド」を一部修正して使いました。
以下に簡単に解説します。
1 満州事変の授業
・満州になぜ日本人と関東軍がいるのかを復習する
・条約で日本の権益と日本人の人権を守らなければならない中国(張学良など)がそれに違反して日本人を迫害した。
被害は昭和4年~5年にかけてピークに達した。
・政府は国際連盟の協調外交の立場に立って、関東軍が動くことを強く禁じ、中国国民党政府に抗議することを続けた「遺憾である。是正してほしい」。しかし事態は変わらいどころか年々ひどくなった。
・満州の日本人を守れない政府に反抗して関東軍が勝手に戦争を始めた。柳条湖事件は戦後謀略だったとわかる。
(日常的にあった鉄道事故を自分で戦争を始めた理由・・・12000人が240000人の軍に勝つには?)
・発問「あなたが当時の日本国民だったら、どちらを支持しますか? A 関東軍 B 政府(外務省)」
・勝利して満州国を建国(愛新覚羅皇帝と満州独立説のこと)。東亜の近代国家として大発展し毎年20万人の中国人移民が、内戦が続く中国から押し寄せた。移民たちは治安の良さと豊かさを支持していた。
・国連リットン調査団報告
「①中国の日本人迫害は条約に違反している(違法である) ②満州国は認めない。日本は満州国から手を引け」
・不満とした日本は国際連盟を脱退した。日本と中国は停戦協定を結び満州事変は終わった。
・メディアと国民世論は関東軍を支持した。
(注)軍人が政府(天皇)の命令なしに独断で戦争を始め、政府が「勝ったから」と後追いでそれを認め予算をつけたしまったことは、やむを得なかったとはいえ、結果として、立憲国家日本にとっては大きななダメージとなった。あれがいいなら正義のためにオレも!という軍人が出てくる。授業ではこの点も触れた。
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