ロシア・ウクライナ戦争を考える(4) プーチンとトランプ



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プーチンの「大ロシア主義」とトランプの「アメリカ・ファースト(自国中心主義)」は、ともにナショナリズム的であり、反グローバリズムを掲げる点で共通していますが、その背景や目指す国家像、国際秩序に対する態度などの点で大きく異なります。以下に共通点と相違点を整理してみます。


目次

🔵 共通点(同じ・似ている点)

項目プーチン(ロシア)トランプ(アメリカ)
① 自国第一主義「ロシアの歴史的使命」を最優先「アメリカ・ファースト」を掲げ、国際協調を軽視
② 反グローバリズム欧米主導のリベラル秩序を敵視多国間条約や国際機関(WTO、WHOなど)を批判
③ 保守的な価値観伝統的家族観、ロシア正教的価値観、LGBTQ批判キリスト教的保守、PC・多様性・トランスジェンダー・移民に否定的
④ 被害者意識「西側によるロシア包囲」「裏切り」「他国に搾取されるアメリカ」「不公平な貿易」「損をしたアメリカ」
⑤ カリスマ的指導者像自らを「ロシア文明」の守護者として演出「ワシントンの腐敗を破壊する」救世主として演出

🔴 相違点(異なる・対立する点)

観点プーチン(大ロシア主義)トランプ(アメリカ・ファースト)
① 拡張主義か孤立主義か明確な拡張主義(クリミア併合、ウクライナ侵攻)孤立主義的傾向(海外介入に否定的)
② 国家アイデンティティの定義民族的・歴史的同一性(ロシア世界)重視国籍・経済的利益による帰属意識
③ 国際秩序への態度現状破壊的(西側秩序に挑戦、NATO批判)利用主義的(秩序を利用するが尊重しない)
④ 帝国主義的ナショナリズム勢力圏と考える周辺国の国家主権を認めない。武力でウクライナ侵攻中。最終的な戦略目標はウクライナの領土化。東部州を取って停戦しても目標は捨てない。帝国志向は薄いが、対中国戦略においては帝国主義的にふるまう(パナマやグリーンランドなど)。本音では南北アメリカ大陸の諸国家の主権を認めていない。
⑤ 政治体制観権威主義・終身的統治民主制度に形式上従うが、ポピュリズム的
⑥ 軍事行動積極的・攻撃的(戦争の手段として肯定)核兵器の使用もありうる非軍事的圧力(経済制裁・関税)を優先・ロシアの核兵器使用を恐れている

🟡 まとめ

プーチントランプ
ナショナリズムの性質歴史的・文明的・帝国的経済的・国民中心的・反エリート的
国際秩序に対する態度壊してロシア中心の勢力圏樹立修正して自国に有利にする
最終目標ロシア帝国/文明圏の再建アメリカの利益最大化と国内秩序維持

両者の思想は、共に「国境を越える価値観(リベラリズム、グローバリズム)」への反発という点で重なりますが、プーチンは「領土・文明」の回復を求め、トランプは「経済・国民の優先」に焦点を当てています。

プーチンの敵は欧米中心の国際秩序と価値観であるが、トランプの敵は国内のグローバリズム勢力・リベラリズム勢力である。プーチンのナショナリズムは国外に敵を持ち(国内を抑えて団結できれば)矛盾がないが、トランプのナショナリズムは国内の半分が敵であるようなきわめて分裂したナショナリズムになっている。

この違いが、ロシア・ウクライナ戦争の停戦交渉におけるトランプのリーダーシップが一貫性を持ちえない理由である。トランプはバイデン政権のような「自由と民主主義の盟主」としてプーチンの敵になることはしないというのが前提なので、プーチンに切れるカードがないのだ。それでウクライナのゼレンスキーに我慢させて停戦に持ち込もうとしたが、それに対してウクライナが断固としたナショナリズム(自国の独立と自由を守る)を貫いて抵抗しているのが現状である。いつまで続くかは微妙で流れはロシアの側に傾いています。

こうしてみると「グローバリズム」VS.「ナショナリズム」という図式でロシアの肩を持ったみなさんは、ウクライナのナショナリズムだけは否定していたことがわかる。その点ではプーチンとまったく同じ立場だったわけだ。彼らは、ウクライナはナチスで汚職にまみれた腐敗した国家だから独立国家であるべきではなく、ロシアにのみこまれるべきだといい続けることになった。つまるところ、彼らは、強い国の帝国主義的ナショナリズムだけが正しいという不思議な立場にいきついてしまった。日本のことはどうするのだろう?

渡辺惣樹さんが最近のYouTube番組でロシア・ウクライナ戦争は歴史に学べと言っていた。
何のことかと思えば、ナチスがポーランドに侵攻したのは「ポーランドがドイツの要求を何度も否定し続けたからだ。だからヒトラーは仕方なくポーランドに攻め込んだんだ」と言っていた。
つまりあの戦争はポーランドが実力もないのに我儘だったせいで起きたのでした。やれやれ。戦わないでナチスに国を売り渡せば第二次世界大戦は起きていないという話です。
それと同じで、この戦争はプーチンの言うことを聞かない無謀なウクライナのせいで起きたというわけだ。
これは前に述べたトランプの平和主義(「この戦争はロシアの侵攻に抵抗して戦ったウクライナが起こした」)とぴったり重なります。ドイツ・ポーランドの史実は検証できていませんが。
やれやれ。
とうとう憲法九条信者の「外国に攻められたら降参しよう!そうすれば戦争にはならない。平和だ!」という主張ともぴったり重なってしまいました。
いまや九条信者の平和主義が世界の最先端の思想的な立場になろうとしています。
これに驚いているのはこのブログくらいかもしれませんが、大変な時代になりました。

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この記事を書いた人

昭和24年、埼玉県生まれ。昭和59年、大宮市の小学校教員に採用される。大宮教育サークルを設立し、『授業づくりネットワーク』創刊に参画。冷戦崩壊後、義務教育の教育内容に強い疑問を抱き、平成7年自由主義史観研究会(藤岡信勝代表)の創立に参画。以後、20余年間小中学校の教員として、「日本が好きになる歴史授業」を実践研究してきた。
現在は授業づくり JAPAN さいたま代表として、ブログや SNS で運動を進め、各地で、またオンラインで「日本が好きになる!歴史授業講座」を開催している。
著書に『新装版 学校で学びたい歴史』(青林堂)『授業づくりJAPANの日本が好きになる!歴史全授業』(私家版) 他、共著に「教科書が教えない歴史」(産経新聞社) 他がある。

【ブログ】
齋藤武夫の日本が好きになる!歴史全授業
https://www.saitotakeo.com/

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